河南町の家

所在地:大阪府南河内郡河南町
構造規模:木造平屋
延床面積:75.35㎡(22.79坪)
竣工:2019年
施工:千福建設(担当:千福、棟梁:林)
家族構成:夫婦+子供2人

大阪府南東部、奈良県との境に連なる金剛山地を源流とし、河内平野に向かって流れる水域に広がる河岸段丘。いくつもの古墳が残り、古くから人の営みが続いていることが感じられる。そんな風土に建つ、4人家族のための住宅。

御主人は造園を生業としており、家の周りは先代より続く植木畑や果樹畑となっています。今後、じっくり時間をかけて畑に手を入れ、暮らしと植物が共存する、生態系豊かな森のような庭を作っていかれるとのこと。暮らしの中心に、そんな庭に繋がる土間のある住まいを考えました。

土間には家族が集える食卓を置き、その周りを包み込むようにキッチン、板張りのリビング、仕事用のワークスペース、ロフト、薪ストーブなどを配置しています。庭の風景もまた、その中のひとつとして寄り添ってくれることでしょう。

御夫婦からのリクエストのひとつだったのが、雨樋を設けないこと。また、パイプやU 字溝による雨水の排水を行わないことでした。雨は大地に浸透した上で、川や地下水に繋がるのが本来あるべき自然の姿。そんな自然の摂理に逆らわず、軒先からの雨垂れや雨音を楽しめる家にとのことでした。

軒先から落ちた雨水の処理は、作庭と共に住まい手にお任せすることになりますが、雨の吹込みや、雨落ちからの跳ね返りがあったとしても、ある程度は安心して開口部を開放できるように、また外壁を守るためにも軒を深くすることに配慮しました。

仁和作/草庭ナーセリー
 https://kusaniwasaku.com/

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リビングから土間と庭を見る。食卓の奥はキッチン。

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アプローチ(未完)と東側外観。外壁は杉の赤身板を無塗装で張り上げています。

南側外観。屋根はガルバリウム鋼板のタテハゼ葺き。

深い軒下には住まい手により、ウッドデッキと土間入口前のポーチが作られる予定。

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土間への入口には引込みのガラス戸と格子付きの網戸を設けている。かつての農家住宅のように玄関は存在しない。

造園を生業とする住まい手が、地下足袋のままで食事や休憩のできるスペースとして土間を希望されました。仕上げの敷瓦は、島根の石州窯変瓦。赤みを帯びた風合いが特徴で、見る角度や光の加減で色調が変化します。住まい手が自ら施工されました。食卓は庭づくりのお客様との会話にも利用されます。

食卓の奥には薪ストーブ。右側はキッチンカウンター。

土間は奥の勝手口へと続き、風がよく通る。食卓の隣には杉板張りのリビング。ハシゴを上ると収納兼用のロフト。土台を除く構造材は奈良県吉野産の杉、自然乾燥材。

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リビングから土間を見る。ソファーの後ろはデスクワークのためのスペース。

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食卓からリビングを見る。リビングの奥は子供部屋となっており、ふたりの子供に分けて使用できるように入口を2ヶ所設けている。

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食卓からキッチンを見る。

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キッチンにも土間が続く。右側が収納兼用のキッチンカウンター。

キッチンカウンターより食卓越しにリビング~子供部屋を見る。壁は生石灰クリーム左官仕上げ。

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ワークスペースより土間を見る。リビング越しに庭の見えるカウンターデスクを設けています。

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土間からワークスペース側を見る。奥には寝室、右側はクローゼットと浴室に続く洗面スペースとなっている。ワークスペース上部はロフト。

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ワークスペース上部のロフト。床の半分は格子状になっていて、薪ストーブの暖気循環に利用できる。また、引戸を介して子供部屋上部のロフトにも繋がり、天井付近の室内空気の流動性を確保している。冬場の暖気調整と夏場の排熱経路として利用する計画。奥の窓を開けることで、温度差換気による家全体の排熱ができる。

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子供部屋側のロフトより土間吹抜を見る。薪ストーブの煙突が見える。キッチン上部に設けた奥の窓も夏場の排熱に利用。2方向に換気経路をとっている。

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ロフトよりリビングと土間を見下ろす。掃き出し窓の外にはウッドデッキが伸びて、外の植栽との距離が更に近くなる予定。

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中高木、灌木、草本植物などが、バランス良く混植されることで、森のような庭への歩みが始まりました。

約1年後

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緑に囲まれつつある南側外観。

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歩くと足裏にふんわりとした柔らかい地面が印象的。木陰にも風が通り、植物も居心地が良さそう。

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土間入口へのアプローチも整いました。

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ポーチ、ウッドデッキ、三和土(タタキ)仕上げの犬走り、雨落ちなどの外廻りは全て、造園を生業とする住まい手によって作られました。

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深い軒下にできた居心地の良い空間。

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庭などの外廻りは常に進行形。住まい手は庭づくりをじっくり楽しみながら、家族全員で少しずつ手を加えていくのだそうです。庭とのつき合い方、そして楽しみ方のひとつの提案なのかもしれません。

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植物と土、木と石、風と水、光と陰に満たされ・・・、

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そして、人の暮らしと調和する時間が刻まれていく。